君の目に映らなかった春

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駅のホーム

薄曇りの四月

春風がスカートの裾を

ひらりと遊ばせた

反対側のホームに

あなたの背中

ひとつ小さく息をのんで

手を振ることもできず

一度だけ振り返った

その目に映らなかった私は

行き先を告げるベルの音に

掻き消されて消えた

春風がさらうのは

花びらだけじゃないんだね

名前さえ呼べなかった私の

小さな恋もいっしょに

またひとつ、春が終わる

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